革の歴史


皮革製造の歴史


もっとも初期の段階においては、ただ単に生皮を乾燥してもみほぐして柔らかくしただけで用いたものではないであろうか。然しそのままでは腐敗し易いので動物性又は、植物性油脂を皮に塗ったり、煙でいぶしたり、木の皮から抽出した液につけたりして腐敗しにくい柔らかい革を作ることを経験的に覚えて行ったのだろうと想像される。

 また人類は数千年以前から、すでに草を染色する方法も心得ていて動物や植物から染料を作り出したようである。植物性染料はそれ程多くはないととしても今日でもアニリン染料と共に革の染色に利用されている。

 この様に有史以前から今日に至るまでー方で科学文明の進歩に相伴って皮革の製造は最初は手造りにより後になって産業として発展してきたのである。現在における皮革産業の重要性については言うに及ばない。

 今までに革の代用品として色々なものが開発されてきたが、皮革の模造品については、やはり天然の皮革の持つ色々な長所を備えていることが出来ないようである、というのは天然皮革に関して言えば原材料となる原皮は食肉の副産物であり、いつでも供給出来るし、革になった場合にも、代替品には決して見られない種々の特質を持っているからである。

 例えば天然の革には水分を吸収したり、それを発散させたりする性質があるが、合成皮革にはそれは期待出来ない、自然乾燥させた革は通常14%程の水分を合んでいるが、仮に倍近くの30%位の水分を合んだ革でも別に湿った感じはしない、ということは革靴は足から出る汗の貯蔵器の様な役割を果たしているということで、我々は別段それを不快に思わない。合成皮革の場合の水分の吸収率は僅か3〜4%にすぎないので、こうはいかない。革はまた自左に変形する性質を持っているので、たとえ最初は靴が足になじまずに窮屈に感じられても足の形に応じてなじんでくる。人工或は合成皮革は伸縮性が強くて着用している間に変形しても一晩で元の形に戻ってしまう。

 一般に皮革は天然皮革またはかわの名前で日常生活の中に深く入り込んでいるが、このように常に身近にあるわりには皮革に対する知識の少ない人が多いのは、これは多分に歴史的背景によるところがあると思われる。

 日本では皮革工業らしいものが興ったのは明治の初めであるが大部分が軍需用品であり、民需用は一握りの特権階級に限られていた、一般に親しまれる様になってきたのは、第二次大戦以後である。

 何万年も前から使われてきた革が今日のように.合成化学が進歩しても、なお機能性および美しさで第一級の地位を確保していることを見ても如何に、すぐれた素材であるかがわかる。

 かつては自国で余った原皮を輸出していたにすぎない国々において、皮革製造が産業として目覚ましく発展し始めたアルゼンチン、ブラジル、インド、パキスタン、バングラデッシュ、トルコその他アフリカ諸国等が、これらの国々は今や半仕上げ、または完全に仕上げした革を工業先進国に輸出するまでになった。国によっては製品となった靴、カバン等輸出をしているところさえある。先進国における皮革産業は、今や抜本的な改革を迫られているのである。
 

皮と革のはなし



皮は牛、馬、羊、豚などの動物の本体から削離した、未処理(なめし前の状態)のものを皮といい生皮とか原皮とよんでいる。

外国では大きな動物の皮をハイドといい小さい動物の皮をスキンと区別している。 
革はなめし終わって安定の状態となったものを革(Leather)という。
 

革のお手入れ



1.温度
 

高温な場所や暖房機の側に長いことおいたりすると、変形したり、長時間日光に当てると変色する恐れがあったりする。


2.カビ

 

汚れ、高温、多湿の三つの要素がそろうとカビが繁殖する。
したがって、1つあるいはそれ以上の条件を除去すれば、カビの繁殖を防止することができる。そのため、汚れた場合、保管前には必ず汚れを落とすことが必要である。又、保管には乾燥剤を入れ除湿することと低温にすることが必要である。
カビが生えた場合には、やわらかい布でこすり取ること、カビが一度つくと除去は難しいので生えないようにするのが肝心である。


3.錆

 

金具は殆ど装飾メッキしてあるので長時間放っておいたり、多湿のところに置くと酸化し、錆が生えたり剥げることがあるので、通気の良い場所に保管することが大事です。


4.埃

 

ほこりは軟質のブラシや柔らかい布で拭いて取るか、たたいてほこりを除去すると良い。


5.水濡れ

 

雨水などに濡れると色々な箇所に支障をおこす場合があるので柔らかい布でふき取り影干しして乾燥剤を入れてしまうようにすると良い。


6.汚れ、シミ

 

シミには醤油、砂糖類のような水溶性のものと、油などの油溶性のものがある。温水でふいて取れるとこもあるが取れない場合は中性洗剤を温水に溶かして拭くか、洗剤液をしみこました布で軽くたたくと汚れが布に移行して取れる場合もある。


7.起毛革の汚れ

 

ヌバック、スエード革など起毛した皮の表面についた汚れは消しゴムが有効であり、毛がなくなったり光った場合ナイロンの毛ブラシでブラッシングすれば毛足が美しく揃い、又汚れやホコリも落ちます。


8.まとめ

 

天然皮革は雨や汗などの水分に大変弱く、最も自然な革らしい仕上げほど色落ちのアクシデントがあります。
又、長時間日にさらしておくと、色焼けをする場合がありますし、車内など高温な場所での放置は変形、変質のつながりますのでお避け下さい。
もし水に濡れた時は素早く乾いた布で軽く叩くように拭き取り、形を整え吸収性のある紙類をつめて陰干しして下さい。ドライヤー、アイロンなどは変形、変質につながりますのでおやめ下さい。又、濡れたまま保管するとカビのはえる可能性もありますので注意下さい。
保管は通気性のよい布などに包み風通しの良い場所で、重ねず保管して下さい。(カビを防ぐこともできます) 
 

革の種類



カーフスキン(仔牛革)
 

生後6ヶ月ぐらいまでの仔牛の革。牛革の中でも最上級。薄くてキメが細かく、しなやかでキズが少ない。

キップスキン(仔牛革)

 

生後1年以内のもの。カーフよりもキメは粗いが、それだけ厚く強い。カーフに次いで上質。

カウ・ハイド

 

生後2年ぐらいまでの雄の牛革。キップより厚くて強い。

ステア・ハイド

 

生後3〜6ヶ月の間に去勢した雄の牛革で生後2年以上経ったもの。革が厚くて強い。

プル・ハイド

 

生後3年以上の繁殖用の雄の革。大型で粗い組織をもち、丈夫で厚い。

馬革

 

判が大きくて柔らかい。尻の部分はコードバンと呼ばれて、繊維の組織が緻密であるため、仕上げは美しい光沢をもっています。

ピックスキン

 

豚革。牛革についで利用範囲が広く、摩擦に強い。革の表面に毛穴が三つずつ並んでいるのが特徴。

ゴートスキン

 

山羊革。革は薄くて柔らかく、しかも丈夫で型くずれしにくい。毛穴の形に特徴があり、仔山羊革はキッドスキンと言い最高級です。

シープスキン

 

羊革。丈夫さではゴートに劣り、軽くて柔らかで防寒材料に多く使われています。仔羊革はラムスキンと言う。

カンガルースキン

 

産地はオースラリア。丈夫で軽くてしなやか。高級素材として珍重されています。